ワタリガラスは美しい鳥だ。光沢のある黒い羽を持ち、賢くタカやハヤブサにも負けない飛行の名人である。ワタリガラスが見事に空中を飛びまわるさまは繁殖期に見られる。熱心な求愛の儀式として、空中で追いかけっこや急降下をしたり、旋回するなど、入念なダンスがくり広げられるのだ。
ワタリガラスはアメリカ先住民にあがめられ、その遊び好きの性格から“悪賢いいたずら屋”と表現されてきた。通常、カーカーという声で感情を表現するが、バラエティーに富んだ鳴き声を自慢げに披露する。
ワタリガラスは有能なハンターで、協力して狩りをする。1羽の鳥を捕るには多すぎるほどの数でチームを組み、獲物を追いつめて遊ぶこともある。また、齧歯(げっし)類、穀物、幼虫、昆虫だけでなく、ほかの鳥、例えば海鳥の卵やヒナも獲物にする。死肉や人間の出すゴミを食べることもある。
冬は群れを作り、日中はエサを探して夜はねぐらに帰る。ほかの季節は、つがいや小さな集団で行動している。1組のつがいが生涯を共にすると考えられており、木の枝で大きな巣を作って、毎春3個から7個の卵を産む。ヒナが巣立つまでの数カ月間、親鳥は2羽そろって世話をする。
北米に生息するスズメ目の中で最大のものがワタリガラスだ。かつては狩猟鳥や家畜へ害を与えると考えられ、駆除された。しかし今日では個体数が増えつつあり、氷に覆われた北極から地中海沿岸地域まで北半球を渡る姿や、都市部で暮らす姿が見られるようになっている。