1995年以来、野生のハシナガチョウザメの幼魚は確認されておらず、2003年以降は成魚さえ一匹も目撃されていない。このため、多くの人はこの巨大魚がすでに絶滅してしまったのではないかと危惧している。たとえ生存が確認されたとしても、個体数がすでに激減しているため、再繁殖は失敗に終わるのではないかと科学者は恐れている。
ハシナガチョウザメは、体長が7メートル、体重450キロという驚異的な大きさの個体も報告されており、世界最大の淡水魚であると考えられている。銀白色の長い胴体を持ち、口は非常に大きく、カヌーのパドルに似た長くて幅の広い鼻先をしている。その鼻先には、エサとなる小魚や甲殻類の位置を特定するためのセンサーがある。
この流線型の巨大魚は、中国では「白鱘(白いチョウザメ)」や「剣吻鱘(「剣のようなクチバシのチョウザメ)」と呼ばれ、かつては中国の揚子江で普通に見られ捕獲されていた。また、古くは「鮪」とも呼ばれていたという。魚体が大きくて肉が豊富にとれるために漁業の恰好のターゲットになるとともに、正餐の席で歓迎される食材にもなり、古代中国の皇帝の席でもメニューに加えられていた。しかし、1980年に行われたダムの建設は、ハシナガチョウザメやほかの注目に値する動物種の生息地である揚子江を永遠に変えてしまったのだ。
葛州覇(かっしゅうは)水力発電計画の一環としてダムが建設され、ハシナガチョウザメが1年のほとんどを過ごす揚子江下流域やデルタ地帯とその上流にある産卵場所の間に壁が作られてしまった。生息域と繁殖域が分断された以上、個体数の増加は到底望めない。
葛州覇ダムの完成以降は巨大な三峡ダムが揚子江をさらに細かく分断しており、ハシナガチョウザメの生息地は脅かされる一方だ。
ハシナガチョウザメは絶滅危惧IA類に指定されているが、この巨大魚の運命はもはや飼育下繁殖にかかっているといえよう。そのようなプログラムはいままでにも試みられているが、多くの課題が持ち上がっている。中でも特に重要なのは繁殖に適した野生の成魚を見つけることだが、これが非常に困難であることは言うまでもない。