セイウチは、通常は北極圏に近い氷上で何百頭もの群れを成して生活している。この海洋哺乳類は非常に社交性があり、お互いに大声でほえたり、鼻を鳴らしたりするが、繁殖期にはより攻撃的になる。茶色とピンク色のしわくちゃな皮膚のほかに、特徴として白く長いキバや灰色がかったヒゲ、ヒレ、脂肪がたっぷりついた体が挙げられる。
象徴的な長いキバはさまざまな用途に使われるが、どれも北極で生活するのに役立つものばかりだ。「歯で歩く」という学名が付けられているように、凍てついた海水から巨体を引っ張り挙げるときや氷に呼吸のための穴を開けたりするときに利用する。オスは縄張りを守るためにもキバを使う。キバは、最長で約1メートルになるが、実は犬歯が発達したものであり、生涯を通して伸び続ける。
セイウチのそのほかの特徴も同じように北極での生活に適応したものだ。非常に長く繊細なヒゲを探知機のように使い、暗い海底に潜んでいる好物の貝類を探す。北極の寒さから見を守るために体中が脂肪で覆われており、気温や水温に適応するため、心拍数を減らすこともできるのだ。
過去の乱獲が原因で生息数が危機的な状態にまで減少してしまったため、現在セイウチの捕獲が許可されているのはアメリカ先住民のみである。18世紀および19世紀にセイウチのキバや油、皮、肉を狙ったハンターたちによる捕獲が原因で、カナダのセント・ローレンス湾やサーベル島近海、ノバスコティア海岸などのセイウチは絶滅してしまった。